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まるで宇宙船?河口にまたがる近未来デザインの不思議な巨大建築物【長良川河口堰】

三重県

三重県桑名市のなばなの里近くに位置する長良川河口堰。丸っこいフォルムで銀色に輝く建物がいくつも連続して立ち並ぶ姿はまるでSF映画に登場する宇宙船のようです。
長良川河口堰は、高度経済成長期に治水や利水を目的に建設されました。しかし完成に至るまで激しい反対運動が起こり、公共事業に異議を唱える運動として過去最大の盛り上がりをみせた場所でもあります。詳しい内容を写真と共にお伝えします。

ブルースチェン(ライター)
ブルースチェン(ライター)

河口堰とは、主に河口付近において海から来る潮を堰止める施設。この宇宙船のようなデザインの建物は堰のゲートです。

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平成未来デザインの建物の正体は堰のゲート

ゲートの画像

国道一号線を走っていると見える、謎の巨大建築物の連続体。シルバーなフォルムに直線模様が描かれ、丸っこい楕円形の不思議な建物の正体は、長良川河口堰です。

長良川河口堰は1995年に完成し1997年に運用が開始されました。全長は661メートルで建設費は約1,500億円とそのスケールは規格外。橋のように架けられた河口堰の間を歩くこともできます。長良川河口堰管理所(公式ホームページ)

ゲートが連なる様子
写真左手の方面にはナガシマスパーランドが位置しています。
ゲートの様子
部隊に信号を送る無線基地のように見えてしまう

橋の上を歩いてみると、川の上では遮る物がなく、強風が吹き荒れていました。この不思議な形状のゲートはそんな風を受け流すための実用的なフォルムなのですが、滑らかな曲線の外観にインダストリアルな色調を見ると、宇宙船が一列になって迫り来るSF映画の世界を思い浮かべてしまいます。

連なるゲート

長良川河口堰の役割

ゲートには通信設備や複数のワイヤーが設置されています。長良川河口堰はこのワイヤーでゲートを操作し川の水と海水が混ざらないようにして塩害を防いだり堰の上流を淡水化して愛知県・三重県・名古屋市で、水道用水や工業用水を安定的に供給できるようにしています。また洪水時には川の水を安全に流下させる働きもあります。

連なるゲートの様子

長良川は日本三大清流の一つ

長良川上流の様子

四万十川・柿田川とともに長良川は「日本三大清流の一つとして数えられています。本流に河川法で規定されるダムが存在しない事でも知られ、長良川河口堰が出来るまでは、本州で唯一の本流に堰の無い大きな川でした。
長良川の清らかで豊かな水量で育った生き物、特に鮎は絶品で古くより漁業が盛んに行われてきたとともに、水と関わりの深い伝統産業である美濃和紙や藍染などが育まれた等、長良川は人々の生活と深く結びついています。

ブルースチェン(ライター)
ブルースチェン(ライター)

鮎は川で生まれ、海へ下り成長して川に戻って産卵し、一生を終える回遊魚です。でもあれ?ゲートがあると海から川に戻って来れないのでは?

長良川河口堰の反対運動

議員席

長良川河口堰は激しい反対運動が起こった場所としても知られています。反対運動は大きく3つの時期に分けることができます。

1960年代から70年代。主に地域住民が反対。

  • 長良川河口堰の建設計画が具体化し始めた頃から、地元の漁業関係者や環境保護団体を中心に反対運動が始まりました。
  • 主な反対理由は、河口堰の建設によって、鮎やシジミなどの漁獲量が減少するのではないかという懸念や、河川の生態系が破壊されるのではないかというものでした。
  • しかしながら、1976年に発生した長良川水害を契機に反対運動は急速に沈静化。一部反対運動が続くものの、1980年代末に長良川河口堰起工式を迎えることとなりました。

1990年代は全国規模で反対運動が巻き起こる。選挙の争点にも。

  • 本体着工が再開されると、再び反対運動が活発化。
  • 運動の焦点に環境保護、無駄な公共事業の廃止が加わり、運動の主体も地域住人だけに留まらず全国規模に発展しました。
  • 1991年に仮装やのぼり旗でアピールしたカヌー約700艇が現地に集結し反対運動を行なったり、1993年に、『美味しんぼ』の第39巻に「長良川を救え」という題で長良川河口堰でサツキマスが滅びると描かれたりと運動は1990年代半ばにピークを迎えました。
  • また、知事選や衆議院選挙の争点になることもあり、最盛期には、国会議員のほとんどが賛否を問われるレベルの問題として扱われました。
  • この時期の反対運動が後の河川法改正の契機になったとも言われています。

建設後の反対運動

  • 河口堰の本格運用が開始された後も、環境への影響を懸念する声は根強く、反対運動は継続されました。
  • 特に、アユの漁獲量が減少していることや、河川の底質汚染が進んでいることなどを理由に、河口堰の開放や撤去を求める声が上がっています。
  • 「河口堰のアユへの影響はほぼない」と主張する機構と、「悪影響は明白だ」と反論する市民学習会のように、意見が分かれています。

河川環境の生態系・環境保全の取り組み

魚道の写真
長良川河口堰、魚道の様子

長良川河口堰には鮎などの魚類が遡上・降下できるよう、魚道が設置されています。魚道は、魚の種類や大きさに合わせて設計されており、魚が遡上しやすいように工夫されています。また、定期的に魚類の遡上・降下状況や水質を調査し、魚道の改善や水質悪化の兆候があれば適切な対策が行われています。

大きな建物の写真
閘門(兼ロック式魚道)。高低の差の大きい水面で、船舶を昇降させるための装置で、魚道の役割もある。

長良川河口堰アクアプラザながらについて

アクアプラザの外観

長良川河口堰の左岸側には、「長良川河口堰アクアプラザながら」という施設があり、堰の役割や環境保全について学べる展示となっています。こちらもあわせての訪問がおすすめです。

施設名称長良川河口堰アクアプラザながら
所在地桑名市長島町十日外面139番地
電話番号0594-42-5071
利用時間(営業時間)午前10時~午後4時
休業日月曜日、年末年始(12月29日~1月3日)

長良川河口堰のアクセス

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参考情報

ウェブサイト

論文

J-Stage: 論争の続く長良川河口堰問題に関する論文が掲載されています。
参考URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajg/2010f/0/2010f_0_194/_article/-char/ja/

愛知県HP内資料: 長良川河口堰をなぜつくったのか長良川河口堰の経緯についての資料。
参考URL:https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/24959.pdf

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