徳之島の闘牛は、日本一熱い――そう断言しても誰も文句は言わないでしょう!
島全体が闘牛で沸き立ち、牛とともに生きている。まさに“闘牛アイランド”
闘牛を飼っている家の男の子はモテモテで、
試合で突撃ラッパを吹ける子は「すげえ!」と学校で憧れの的です。
それほどまでに、闘牛は伝統文化というよりも島の人々の生活に溶け込んだ熱狂であり、最大の娯楽。
サッカー好きにとってのチャンピオンズリーグが世界一であることが周知の事実のように、
徳之島で育った闘牛は全国屈指の強さを誇ります。
その実力は沖縄にも届き、多くの牛が輸出されているほど。
そんな熱い闘牛文化を間近で感じられるのが、伊仙町にある「なくさみ館」。
今回はこの“闘牛の聖地”の様子に加え、
徳之島の名物「砂浜を散歩する闘牛」が見られるスポットもあわせてご紹介します!
徳之島観光で闘牛を見るならここ!「なくさみ館」

「なくさみ館」は、徳之島で最も大きな闘牛場で島の誇りと情熱が詰まった“闘牛の聖地”です。
試合が行われていない日でも、ここは訪れる価値あり。
巨大なドームを見学でき、静寂の中にも熱気の名残が漂う――そんな空気を肌で感じられる場所。
隣接する資料館では、闘牛の歴史や技、島に根づいた文化がわかりやすく解説展示されています。
誰もがきっと「一度でいいから本物の闘牛を見てみたい」と思うはず。
試合がない日でも闘牛を見ることができる!

運が良ければ、試合に向けた稽古中の牛や、力試しの“練習試合”を目にすることもできます。どうしても練習の様子が見たい場合は伊仙町きゅらまち観光課に尋ねてみると良いかもしれません。
徳之島で行われる闘牛の試合日程や情報はこちら
年に3回開催される全島一大会(最強の牛を決める)を含めた大会は、おおむね下記の期間に行われます。
日程は2〜3ヶ月前に決まります。
- <正 月> 1月1日~3日の3日間
- <G W> 4月末~5月初旬のGW期間の3日間
- <10月> 第3日曜日を含む2日間
インターネット上できちんとした情報が事前に知らせられることは少ないので、試合日程は島内の知人に聞くか徳之島観光連盟に電話して問い合わせるのが確実です。
資料館スタッフの案内で牛舎見学へ
資料館のスタッフのご厚意があれば、近くにある牛舎の見学も可能。
私が訪れた日には、2頭の牛を見せていただきました。


この牛の体重はなんと約1トン。自動車並みの巨体です。
目の前に立つと筋肉が波打つように盛り上がり、まるで生きた恐竜のようでした。
下の牛は先ほどの牛と比べるとツノが上むきに生えていることがわかると思います。

牛のツノの形は多種多様。こちらは「タチュー」と呼ばれるツノの形で、つき技が得意といわれています。
試合が近づくと、牛主たちはツノを丁寧に研ぐそう。
牛のツノには人間の歯と同じように神経や血管が通っており、一度抜けると二度と生えてきません。ツノが折れることは、すなわち引退を意味します。
牛舎の片隅には、ピカピカ光るツノが静かに置かれていました。牛主たちがツノを研ぐ練習で使用しているそうです。
そんな事実を知ってツノを手に取ると、なんだか物悲しさを感じました。


他県とは違う?徳之島の闘牛の魅力

徳之島の闘牛は他県と同様、牛の戦意が喪失したら負けというルール。
しかし、他県と圧倒的に違うのが、その盛り上がり。
勝利すると牛主や観客が跳ねるように「ワイド!ワイド!」と手足を動かし声をあげて喜びを表現します。
その様子は爆発的で、初見ではびっくりするほどの狂喜乱舞っぷり。牛も尻尾をフリフリして嬉しそう。
牛主にとって大会で優勝することは、本州に住む人には想像にも及ばないほど名誉なこと。
多くの牛主は本業と兼業して闘牛を育てています。闘牛の飼育と訓練には相当の費用と時間が必要になりますが、一切の妥協をしません。
名誉と誇りのために、情熱とエネルギーのすべてを注ぎ込みます。
徳之島ならではの闘牛ポスターや番付表

なくさみ館には歴代の大会ポスターや番付表も展示されています。
実はこれも、徳之島ならではの物なんです。
格闘技のポスターのように牛の姿が示されたド派手なデザインで島を挙げて盛り上がる闘牛文化の熱気が、紙面からも伝わってきます。

下は沖縄で行われた「全島闘牛大会」の番付表。徳之島の物と比べると違いは一目瞭然だ。

「なくさみ」という言葉の意味から闘牛文化を考える

なくさみ館の「なくさみ」の語源は“慰める”が由来です。
徳之島では、かつて農作業が一段落した収穫期のあと、日々の労働で疲れた心と体を癒やすために各集落の人々が集まり、闘牛や踊りなどを楽しんでいました。
――それが「なくさみ」の原点です。
この“なくさみの精神”は、現代の徳之島にも確かに息づいているように感じます。
私自身、現在は本州で暮らしていますが、徳之島で生まれました。
一族で牛を飼っていたこともあり、島に帰省した際には闘牛に関わる人々と話す機会があります。
話していて印象的なのは、闘牛が好きな人たちは「徳之島の闘牛がもっと有名になってほしい」という気持ちはあるものの、
実際には「闘牛は自分たちの楽しみだから」と、あくまで生活の一部として大切にしていること。

以前、牛を飼っている知り合いに「観光客向けに応援タオルやTシャツなどを販売したら人気が出るのでは?」と話したところ、
「タオルはお世話になっている人やお祝いで配るものでしょ?」と不思議そうな顔をされたことがあります。
徳之島の人々にとって、闘牛は観光資源や守るべき伝統というものではなく、暮らしや心に深く根ざした“なくさみ文化”そのものなのです。

砂浜を散歩する闘牛がみられる場所はどこ?

徳之島の観光パンフレットなどで見かける、砂浜を散歩する闘牛。
「実際に見てみたい」と思う方も多いのではないでしょうか。
その場所は、闘牛場の近くにある砂浜。
徳之島にはいくつもの闘牛場があり、その周辺で飼育されている牛たちが、夕方になると砂浜へと散歩に出かけます。
島にはだいたい400頭ぐらいの闘牛がいるので、かなりの確率で見つけられると思います。
見られる時間帯はだいたい16時半〜17時半ごろ。
なぜこの時間なのかというと、牛の散歩は学生が行うことが多いから。学校から帰宅し牛舎を掃除して、散歩するという流れ。
砂浜を歩いているだけで運動になるの?と思われる方もいるかもしれませんが、1トン級の体重で歩くと砂浜がかなり沈み込むのでハードトレーニングになるのだ。熱い日は海水浴もしたりする。
また、散歩中に暴れたりしないの?とも思うかもしれませんが、牛は賢い生き物。急に人間に襲いかかることはまずない。
もしも牛が暴れたら、鼻に通したロープを引っ張り、手で鼻を押さえつける。鼻が牛の急所なのだ。
徳之島で牛の散歩を見たい場合は花徳浜がおすすめ

砂浜を歩く闘牛が見られる場所で特におすすめなのが花徳浜。
ここは全国でも屈指のサーフスポットとして知られており、波が高く、力強い海の姿が印象的です。
数百メートルにわたって弓状に広がる砂浜を、サーファーと闘牛が同じ時間に共有している。
闘牛の迫力と、南国の海の荒々しさ。その両方を一度に感じることができる珍スポットです。
なくさみ館のアクセス
| スポット名 | 徳之島なくさみ館(イベント会場) |
|---|---|
| 住所 | 鹿児島県大島郡伊仙町目手久626 |
| 管理者 | 伊仙町きゅらまち観光課 |
| 電話番号 | 0997-86-2093 |
| 料金(入場料等) | 催事によって異なる |
| 駐車場の有無 | 有り |
まとめ
徳之島の闘牛は、島の人々にとって伝統でも観光でもなく“生き方”そのもの。
子どもたちは牛とともに育ち、大人たちは名誉と誇りをかけて闘牛を育てる。
この島では、闘牛が“娯楽”であると同時に、人と人、そして世代をつなぐ絆になっています。
伊仙町の「なくさみ館」では、そんな徳之島の闘牛文化を間近で体感できます。
試合の迫力はもちろん、資料館の展示や練習風景、砂浜を散歩する牛の姿など、
ここでしか味わえないリアルな徳之島の日常がそこにあります。
観光で訪れるなら、ぜひ「なくさみ館」を中心に、闘牛文化を感じられるスポットを巡ってみてください。
徳之島の“熱”を知れば、きっとあなたの旅の印象が変わるはずです。最後までご覧いただきありがとうございました。




