ベトナム・ハノイの観光中心地「旧市街」。
昔ながらの職人文化が息づくエリアですが、ひときわ異彩を放つ通りがあります。 その名は「ハンマム通り(PHO Hang Mam)」、通称・墓石問屋街です。
日本の墓石とは異なり、故人の顔写真入りの派手な墓石が店頭にズラリと並んでいます。
無数の故人たちと目が合う、ある意味で世界一賑やかなお墓の問屋街。 詳しい様子を写真と共にお伝えします。
【ハノイ旧市街の魅力】中国・フランス統治時代の面影が残る建築美とベトナムの日常を歩く

ハノイの街を歩いていると、不思議な感覚に陥ります。
アジア特有の雑多でエキゾチックな街並みの中に「ヨーロッパ風の建物」が並んでいたかと思えば、そのすぐ隣には「赤と金」で彩られたド派手な中華様式の寺院が鎮座している光景をよく目にするからです。
なぜ、これほどまでに異なる文化が混在しているのか。 その理由は、ベトナムが辿ってきた激動の歩みにあります。
中国王朝による長きにわたる支配と、その後に続いたフランスによる統治。
東洋と西洋、二つの大国の影響を色濃く受けた結果、この街は複雑で、けれど奇跡的に調和の取れた景観を手に入れたのです。
この独特な街並みこそが、世界中の旅人を魅了してやまない理由です。

一歩路地裏へと足を踏み入れればベトナムならではの狭い道に、色とりどりのカラフルな建物がひしめき合う迷宮のような世界。
小さな商店や活気あふれる屋台が軒を連ね地元の人々のエネルギッシュな日常生活がすぐそばで息づいています。

ハノイ旧市街の“職人天国”「36通り」を巡る!金物・仏具・竹製品…通りごとの専門店と歴史

そんなハノイの真髄に触れるなら、通称「36通り」と呼ばれる職人街エリアの散策がおすすめです。
その名の通り、かつてこの地域は36もの同業組合によって区画が明確に分けられ、それぞれの通りが特定の品物を扱う専門店で埋め尽くされていました。
これは古くからハノイ市民の生活を支える重要な商業基盤であり、その伝統と活気は現代の街並みにも受け継がれています。

散策の面白い目印となるのが通り名に付けられた「ハン(Hang)~」という言葉。
これはベトナム語で「店」や「通り」を意味し、その後に続く単語がその通りで主に扱われている商品を示しています。
例えば昔ながらの金物屋が軒を連ねる「Thuoc Bac(トゥオックバック)通り」、色鮮やかな仏具用品がずらりと並ぶ「Hang Ma(ハンマー)通り」。
そして、ホアンキエム湖から西方へ約600メートルほど離れた場所にあり、ありとあらゆる竹製品で店先が埋め尽くされる「Hang Vai(ハンヴァイ)通り」など、通りを一つ曲がるたびに全く異なる専門店の世界が広がっています。


ハノイ旧市街の異色ストリート「ハンマム通り」– 数軒ながら強烈な“墓石問屋街”

ハノイ旧市街に数ある職人街「36通り」の中でもひときわ異彩を放っているのが「ハンマム通り(PHO Hang Mam)」。
なんとここは、墓石を専門に扱う問屋が軒を連ねる、墓石問屋ストリートなのです。
墓石問屋の数は5軒ほどと決して多くはありませんが歩道に沿って堂々と並べられた墓石群の存在感は、まさに強烈。
道行く人々の日常風景の中に突如として現れるこの通りは、ハノイの旧市街ならではの風景です。
顔写真、天使に龍も!日本の常識を覆す、豪華絢爛なベトナム式墓石の世界

ハンマム通りに並ぶ墓石は、私たちが日本で目にするものとは全くの別物です。
まず目に飛び込んでくるのは、故人の顔写真。生き生きとした表情が伝わる、鮮明なカラー写真がドーンとはめ込まれています。
さらに驚かされるのが、刻まれた情報の多さ。 名前や生没年月日はもちろん、「自宅の住所」といった詳細な個人情報まで石に刻み込まれています。
質素な日本の墓石とはかけ離れた見た目でですが、ハノイの人々はそれを当たり前の日常として通り過ぎていきます。
このあまりのギャップに、日本人の私はただただ圧倒されるばかりでした。

さらにデザインの自由奔放さにも驚かされます。
キリスト教の「天使」や「十字架」といった西洋的なモチーフがあったかと思えば、その隣には力強い「龍」やベトナムの国花である「蓮」さらには「薔薇」の花まで彫り込まれているものもあります。
信仰も、趣味も、美意識も。ベトナムの墓跡は全てオーダーメイドで作られており、故人の個性や「その人らしさ」を最大限に表現しているかのようです。
画一的な日本の墓石とはかけ離れた、豪華で自由なデザインの数々。 そこには「形式」よりも「故人への想い」を優先する、ベトナムの人々の死生観が表れていました。

カフェの隣に墓石がズラリ!? ハンマム通りの“日常と非日常が交差する”驚きの立地

このハンマム通りの墓石問屋がさらに興味深いのはその立地。
なんとベトナムで人気の有名コーヒーチェーン店や観光客向けのお土産屋さんのすぐ隣にこれらの豪華な墓石が堂々と並んでいるのです。
おしゃれなカフェで一息つく人々のすぐそばに、人生の終着点を象徴する墓石が展示されている…この日常と非日常が大胆に交差する光景は「すごい組み合わせ」。ハノイという街の懐の深さと文化の多様性を感じさせます。
近くのおすすめスポット
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アクセス
墓石問屋はGoogleマップでは表示されません。ですが以下の住所の場所を目的地にすればたどり着くことが出来ます
住所:Old Quarter, ホアンキエム区 ハノイ ベトナム
詳しい場所をGoogleマップで確認する

まとめ
ベトナムの首都ハノイに息づく「旧市街」──そこは、歴史の香りと現代の活気が見事に融合し、訪れる者を魅了するまさに生きた博物館のような場所でした。今回は特に、通りごとに専門の職人たちが集う「36通り」の賑わいと、その中でもひときわ異彩を放つ“墓石問屋街”「ハンマム通り」が与えてくれる、強烈な異文化体験の魅力に迫りました。
中国とフランス統治時代の面影を残す美しい建築群、迷路のように入り組んだカラフルな路地、そして「Hang~」の名を冠した通りごとに専門店の表情が変わる職人街の楽しさ。さらに、日本の常識とは全く異なる、故人の顔写真が色鮮やかに飾られ、天使や龍、蓮の花が舞う豪華絢爛なベトナム式墓石が、おしゃれなカフェのすぐ隣に当たり前のように並ぶハンマム通りの衝撃的な光景。これらはすべて、ハノイ旧市街が持つ歴史の深さ、文化の多様性、そしてそこに暮らす人々の生活感をダイレクトに伝えてくれます。職人たちの技が光る専門店を巡り、活気あふれる屋台の匂いに誘われ、そして時には度肝を抜かれるような光景に立ち止まる。そんなハノイ旧市街の散策は、単なる観光を超えた、あなたの知的好奇心を刺激し、固定観念を心地よく揺るがす貴重な体験となるでしょう。
このディープで魅力に満ちたハノイ旧市街で、あなたも忘れられない“カルチャーショック”と、心に残る新たな発見をしてみませんか? きっと、ガイドブックだけでは知ることのできない、あなただけのベトナムの素顔が見つかるはずです。


