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高野山の麓に眠る人魚のミイラ【学文路苅萱堂】

人魚のミイラの写真 和歌山県

高野山の麓に位置する「学文路苅萱堂(かむろかるかやどう)」には約1400年前に捕獲されたと伝わる人魚のミイラが安置されています。「果たして本物の人魚なのか」真相は謎。ただ、長く庶民の信仰対象となってきた点が評価され、和歌山県の文化財に指定されています。
人魚のミイラの体長は約60センチ。顔は人間に似ているが、アニメで登場する美女のような見た目ではなく、さながら異界からの来訪神。まん丸に見開いた目に、大きく開けた口には不揃いに牙が並ぶ姿は不気味です。写真撮影は禁止されていますが、隣接する西光寺に申し出れば拝観は可能です。

詳しい様子を写真と共にお伝えします。

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学文路苅萱堂へは事前に問い合わせをして訪問しましょう

お堂の様子

学文路苅萱堂は高野山の参詣口に位置しており、建物には「人魚のお堂」と文字が掲げられています。

人魚の石造

お堂の中に人魚のミイラが安置されていますが、鍵がかかっているため自由には拝観できません。隣接する西光寺(自宅を兼ねた寺務所)に拝観したい旨を伝えて鍵を開けてもらいましょう。私は事前に電話をして訪問しました

西光寺
TEL:0736-32-2274

人魚の魚拓
お堂の外に掲げられていた人魚のミイラ。魚拓のようです。

恐ろしい形相の人魚ミイラ

人魚のミイラ

管理人の方がお堂の中を案内してくださり、飾り棚を観音開きに開き、人魚のミイラを見せてくださります。中を覗くと、上部がガラスケースになった木箱がありその中で異様な存在感を放つミイラが安置されています。
この世のモノとは思えない恐ろしい表情とその姿に呆然と立ち尽くしてしいました。

残念ながら損傷が顕著なこともあり、人魚のミイラの移動及び撮影は禁止されています。

ミイラの表情

上半身には人間的な特徴である乳首や肋骨(エラ?)が見て取れ、指は5本で顔も人間に似ています。しかし、下半身は鱗に覆われ、尾びれがあり完璧な魚状態。まさしく半分にんげん半分魚の人魚です。ただアニメに登場する美しいマーメイドのような姿ではなく、人知の及ばない世界を彷彿とさせる異形の姿をしています。

最も印象深いのは、ムンクの『叫び』のように頬に両手を添え、断末魔が聞こえてきそうな表情。悲しんでいるのか、または怒りで表情が歪んでいるのか、どのような感情なのかは推測できませんが、カッと見開かれたまん丸の目に、大きく開かれた口の中には数本の牙が不揃いに並ぶ姿に恐怖を覚えます。

日本の人魚は古来より不老長寿や無病息災を願う人々の信仰の対象となってきました。一方で災害を呼び起こす存在として畏れられてもきた。この人魚のミイラは仏像のように沢山の人々から拝まれてきた苅萱堂に伝わる秘宝なのである。

参考文献

山口直樹『[決定版]妖怪ミイラ完全File』学研パブリッシング 2010年、P46

人魚のミイラは滋賀県で捕らえられたと伝えられている

大正13年に記された「人魚伝説由来及仁徳寺情緒記」に「この人魚は推古天皇時代(619年)に蒲生川(滋賀県)で捕らえられたもの」と記されています。これが確かなら1400年以上も昔のミイラということになります。ではどうして人魚のミイラが滋賀県から苅萱堂にたどり着いたのでしょうか。室町時代の説教節「石堂丸物語」にその逸話が残されています。

人魚伝説と石童丸物語

石童丸物語は、平安時代に出家した苅萱道心(父)を探す妻と息子の悲話です。息子の石童丸は高野山で父と会うも、父と知らぬまま亡くなってしまいます。妻の千里の前も女人禁制の高野山麓の学文路で息子を待ち侘びて病死してしまうお話です。

この千里の前が肌身離さずに守護仏として持ち歩いたと言われているのが学文路苅萱堂に安置されている人魚のミイラと伝えられています。千里の前は「建奉妙尊」という法号を授かり、学文路に葬られ、人魚のミイラもこの地に残ったとされている。

石童丸伝説
石童丸のイラストが示された看板

石童丸物語は江戸時代に庶民の間で大流行した物語で、高野山の参拝者はこぞって学文路苅萱堂を訪れたという。現代でいう、人気ドラマの聖地巡礼といった所でしょう。人魚のミイラは参拝者に仏教を説く唱導で示されていたとされています。

本物なのか??和歌山県有形民俗文化財に指定

苅萱堂に安置される人魚のミイラは高野山信仰の歴史を立派に伝えることができる文化財として和歌山県に認定され、有形民俗文化財に指定されています。人魚に限らず、鬼やカッパなどのミイラは全国に存在するが、文化財として指定されているミイラは全国内において初めてのことです。県はミイラをサルと魚を組み合わせて作成されたものだと見ているが、作り物だとしても公的な機関が文化的価値があると認めたのは大変興味深いですね。

苅萱堂で販売されている小冊子(300円)で細かな歴史が記載されています
田野賢朗(2016)人魚考(結)

人魚のミイラの写真

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まとめ

伝説上の生き物のミイラは科学的に検証がなされ「本物か偽物」かで話題に取り上げられることが多いですが、私自身はどっちでも良いというのが本音です。この人魚のミイラがサルと魚の合体で作った偽物であったとしても、合成してまで信じようとし、高野山や石童丸伝説との関わりの中で信仰され続けてきた事実は揺るがない。学文路苅萱堂は世にも珍しい人魚のミイラを拝むことができるだけなく、人間の信仰心について深く考えることができるスポットでした。最後まで、ご覧いただきありがとうございました。

アクセス

住所:〒648-0043 和歌山県橋本市学文路542
詳しい場所をGoogleマップで確認する
TEL:0736-32-2274(隣接する西光寺に繋がります)
拝観料は無料でした。

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