高野山の麓にある鎌八幡宮は、無数の鎌が打ち込まれた大樹が祀られている独特な神社です。一見、恐ろしい光景に見えますが、実はこの鎌は、五穀豊穣や無病息災といった願いを込めて奉納されたもの。人々の願いが込められた、縁起の良い場所なのです。
しかし、鎌が密集した様子は、やはり少し不気味で、まるで呪いの現場のような雰囲気も漂わせます。特に夜に見ると、その異様な光景に思わず背筋がゾクッとするかもしれません。詳しい様子を写真とともにお伝えします
鎌八幡宮は世界遺産の構成資産に含まれています

高野山の麓にある鎌八幡宮は、世界遺産に登録されている丹生酒殿神社の境内社という形で位置しています。大きなイチョウの木がシンボルで、特に秋には黄金色の葉が一面に広がり、息をのむような美しい景色が広がります。このイチョウの木は、なんと樹齢300年、高さ25メートルもあります。
鎌が打たれている鎌八幡宮の様子を観察

丹生酒殿神社を正面に右へ進むと小さな公園と「鎌八幡宮」の石碑が現れます。整備された道の先には鬱蒼とした林が続いているのですが、丹生酒殿神社の社殿の真裏にあたる場所に巨木が顔をのぞかせています。
これが鎌八幡宮か!ラスボスが封印されているような雰囲気で巨木に鎌が突き刺さっていて不気味な雰囲気が漂っています。

鎌が幹だけではなく、根に至るまであらゆる場所に突き刺さっています。鎌をよく観察すると、ラベルがクッキリと残った新しいモノから、柄の部分が経年劣化して朽ち果てているモノまで様々。突き刺さり具合もそれぞれ異なり、鎌の先だけが突き刺さったモノから、刃全てが樹木にめり込んでいるモノまで多様です。


鎌を木に打ち込むと言う行為から、藁人形を釘で打ち込む「丑の刻参り」を連想してしまいますが、
道中の看板に「神社での正しい祈り方は私慾の都合で祈る文語ではないことをご理解下さい」と記入されていました。
決して私怨に関する願い事でお参りする場所ではないと強調されているような気がしました。
適切でない願いは鎌が突き刺さらない!?
鎌が突き刺された御神木は「イチイガシ」という神霊が宿るとされる樹木です。なぜ、そんな神聖な樹木に鎌を突き刺すのでしょうか、その理由が1839年(天保10年)に紀州藩により編纂された「紀伊続風土記」に記されています。
「祈願の者鎌を櫟樹に打入れ是を神に献すといふ 祈願成就すへきは其鎌樹に入ること次第に深く叶はさる者は落つといふ 」
(編)仁井田好古 等『紀伊続風土記. 第2輯 伊都,有田,日高,牟婁』帝国地方行政会出版部、1910年
無病息災、子宝、受験諸々の祈願成就を願い鎌を打ち入れ、成就する場合は鎌が深く食い込んでいき、叶わない場合はハズレ落ちると言うわけだ。いつ頃から鎌を刺す信仰が始まったのか上記資料には記載がありませんが、信仰が非常に盛んな時期は社前に鎌を売る店ができ、一度に千丁の鎌を打ち込む信者もいたと記録に残っています。
御神木保護のため、2017年(平成29年)より鎌を打つことが禁止となりました。
ちなみに、ここから1kmほどのところに、鎌八幡の元宮が位置しています。元宮にも鎌が刺さった御神木が残されている。詳しい様子についてはYouTubeチャンネル「和旅チャンネル【和歌山YouTube】」さんが動画でまとめられています。
アクセス
地図アプリで鎌八幡宮を検索する際は「丹生酒殿神社」と調べた方が良いです。「鎌八幡宮」で検索すると、似た信仰のある大阪の円珠庵(鎌八幡)がヒットすることがあるのでお間違いないように
住所:和歌山県伊都郡かつらぎ町三谷631
詳しい場所をGoogleマップで確認する
時間:常時
料金:無料
駐車場有
まとめ
鎌八幡宮の御神木に鎌が突き刺された様子は「呪い」を紐づけたくなる光景でしたが、五穀豊穣や無病息災、家内安全などポジティプな願いと共に鎌が打ち込まれた大変縁起の良い場所でした。日本には様々な信仰の形がありますが、ここまでのインパクトのある風景は他にないと思います。高野山への訪問の際は、ぜひ訪れたいスポットです。
以上です。最後までご覧いただきありがとうございました