バンコクの旧市街、王宮エリアに佇む「アミュレットマーケット」。一見すると活気あふれる普通の市場のようですが、一歩足を踏み入れるとそこは宗教的な道具が専門に扱われる異空間です。僧侶の遺骨や遺髪が練り込まれたというお守りや禍々しい姿の人形などが並び、単なる市場とは一線を画す「呪物」と呼ぶにふさわしい品々がそこかしこに。中でも、ひときわ異様なオーラを放っていたのが、胎児や赤子の遺灰や遺骨を用いて作られたというお守り「クマントーン」。その存在感は素人目に見ても「これはヤバい」と息をのむほどの強烈なものでした。

この記事ではクマントーンが売られていた店の様子やマーケット全体の独特な雰囲気を写真と共にお伝えします。
アミュレットマーケット(タープラチャン市場)の入り口の様子

アミュレットマーケットは、現地では「タープラチャン市場」として親しまれており、バンコクの下町情緒が色濃く残るローカルな市場です。市場はチャオプラヤー川沿いに枝分かれするように広がり、薄暗い通路にはほこりっぽい匂いが漂い、どこか懐かしさを感じさせます。
おばちゃんたちが食べ物をつまみながら談笑したり、店番のおじさんがタイ語のテレビをぼんやりと眺めていたりと、のんびりとした雰囲気が市場全体に広がっています。

アミュレットマーケットはバンコクの三大寺院と呼ばれる有名観光地のすぐ近くに位置しているため、観光の合間に立ち寄りやすく、旅の行程に加えるのにもぴったりなスポットです。

アミュレットマーケットに並ぶプラクルアンとは?

市場にはタイ伝統のお守り「プラクルアン(Phara Kruang)」や呪具や仏具が数多く並んでいます。仏や高僧をかたどったモノが多いなか、ヒンドゥー教の神であるガネーシャや「ピー」と呼ばれるタイ社会の価値観や個人の考え方の根底にあるアニミズム信仰に由来したモノも並んでおり、タイ=仏教のイメージだけでは収まらない多層的で独自性のある信仰の姿を垣間見ることができます。


億越えの価値がつくものある!?

プラクルアンの中には、日本円で数千万円、あるいは億を超える値が付くものもあり、タイではコレクション性の高いアイテムとして広く知られています。その人気の高さから、専門誌が発行されるほどです。
市場では拡大ルーペを使って細部をじっくりと確認する人の姿も多く見られ、本気度の高さがうかがえます。中には、将来的な価値の上昇を見込んで投資目的で購入する人もいるほどだとか。
販売されているプラクルアンは比較的手頃な価格帯。ただ、恐ろしく高価な物もある
アミュレットマーケットで販売されているプラクルアンの多くは20バーツ(100円以内)〜150バーツ程度と比較的手頃な価格帯です。
外国でぼったくりを避けるテクニックとして本当に欲しい物を1番に尋ねないことが挙げられますが、ここでは外国人だとわかっていても通常の価格を教えてくれるのが印象的でした。雑多に並べられた中においても、明かに他とは異なる雰囲気を感じるプラクルアンは500バーツ以上の値段が付いており、ギョッとしました。


運河などから引き揚げられたモノもあるらしく、接客そっちのけで修復や汚れ落としをしている店もありました。

クマントーンの写真

「なんじゃこりゃ!!」市場を周っていると明かに人間をかたどった代物に目が釘付けになる。「これは何??」と店前でつまらなさそうにしている30歳前後の女性店員に尋ねるも、英語が伝わらない。サルの真似をしたり、これが何かを考えているジェスチャーをして質問を伝えると。「あー」と発言。店員に意図が伝わったようだ。
すると妊婦を示すジェスチャーからのお腹への指差しポーズで「ベイビー!!」。「いや嘘やん!!」と思わず日本語で叫んでしまった。「リアル?フェイク?」と単語で尋ねるも。「ベイビー」の一点張り。
まじか・・・値段はケース入りだと300バーツ(約1000円程度)ケースに入っていない物だと150バーツ。いや安すぎないか。「これってクマントーン?」と尋ねると「イエス」と即答されました。
クマントーンとは

クマントーンとは、タイ語で「黄金の少年」を意味し、日本で言う座敷童子のような存在です。家内安全や商売繁盛などのご利益があるとされ、タイでは非常に人気のある精霊の一種として広く信仰されています。信仰の対象として、本物の子どものように扱われるのが特徴で、ご飯やお菓子を供えて丁寧に接することが望ましいとされています。
もともとのクマントーンの作成には、にわかには信じがたい呪術的な儀式が伴っていました。伝統的な方法では、死産した胎児を焼き、乾燥させてミイラ化し、最後に金粉をまぶすというもの。もちろん、現在のタイにおいて胎児をミイラ化しクマントーンを作ることは違法。市場で流通しているクマントーンは遺灰や遺骨を使用して作成されたクマントーンであることが考えられる。クマントーンにはさまざまな種類があり、クマントーンの女児版を「クマンニー」水子を使用したクマントーンは「ルッククロック」と呼ばれています。



クマントーンの効果は凄まじいらしく、未だに墓を荒らして胎児を手に入れようとする呪術師がいる程です。実際に毎年のように逮捕者も出ており、世界的に報じられる事件も多数。逮捕に至っていない物も多くあるはずで、違法に作成されたミイラ化クマントーンは、現在においても闇で販売流通していることが想像できます。以下は世界的に報じられた違法クマントーンに関するニュース記事です。
2012年5月18日、台湾出身の28歳のイギリス市民、チョウ・ホック・クエンがバンコクのホテルの部屋で、焼かれて金で覆われた6人の男性の胎児と一緒に逮捕された。警察は、クエンが台湾で胎児をそれぞれ約6,300米ドルで売るつもりだったと報告した。https://edition.cnn.com/2012/05/18/world/asia/thailand-fetuses-black-magic/index.html
2011年、ラオスでは、村のシャーマンの指示の下で胎児を「ルークロード」として使用するために、妊娠中の妻を殺害した男性が報告されました。https://web.archive.org/web/20110119023404/http://www.news.com.au/breaking-news/man-killed-wife-for-lucky-lotto-feotus/story-e6frfku0-1225990638494
豚や猫を加工したプラクルアンも見せてもらいました。


クマントーンを販売している店の情報
その後、他の店もまわってみましたが。クマントーンはこの店でしか見ることができませんでした。
この店の場所を詳しくお伝えすると、「Trok Nakhon」と示す看板を目印に市場の入り口から進んだ3〜4件目に位置していました。
バンコクの珍スポットについては、以下の記事が面白くとても参考になりますよ。
まとめ
バンコクで珍しいモノが見たいという方にオススメの「アミュレットマーケット」。中でも、特にやばかったのが「クマントーン」。購入も考えましたが、日本への持ち込みが禁止されているモノもあるのではないかと怖くなってやめました。ぜひ実際に行ってその存在を確かめてみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました
アクセス
GoogleMapでアミュレットマーケットの場所を確認する
名称:Amulet Market(ตลาดพระเครื่องท่าพระจันทร์หมีญวน)
住所:สนามพระเครื่อง 1 Trok Sake, Phra Borom Maha Ratchawang, Phra Nakhon, Bangkok 10200 タイ
営業時間:8時〜16時
昼を過ぎると閉まる店も多いようなので、朝方の訪問をオススメします。私は8時頃に訪問しました
タクシーを利用する場合は運転手に「アミュレットマーケット」と言うと伝わります
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参考文献・サイト
ピー信仰については
・スニサー・ウィッタヤーパンヤーノン「タイ人を知る10の言葉」『やっぱりやっぱりやっぱりタイが好き』TRANSIT No.57 講談社MOOK P171
・髙田胤臣(2019)『亜細亜熱帯怪談』 彩図社
・幽霊、UFO、呪物、自殺現場…。丸山ゴンザレスのクレイジー・タイ・ジャーニー ~バンコク裏名所ルポ~ 週プレNEWS 2022年09月15日 取材・文・撮影/丸山ゴンザレス
https://wpb.shueisha.co.jp/news/lifestyle/2022/09/15/117310/
お守りか使い魔か? タイの童子像呪物「クマーントーン/ルーククローク」の謎 webムー 2023.01.11 文=本田不二雄
取材協力=はやせやすひろ、田中俊行、きりん堂、椋橋彩香
https://web-mu.jp/spiritual/9692/
・原材料は人体? タイ人が大切にするお守り「プラクルアン」の奥深さ(前編)webムー 2022.11.16 文=髙田胤臣https://web-mu.jp/spiritual/6264/
・Kuman Thong(英語Wikipedia)https://en.wikipedia.org/wiki/Kuman_Thong