日本各地に現存する人魚のミイラの多くは小型で、その姿から「猿と魚をつなぎ合わせたのでは?」と疑ってしまうものばかりです。そんな中、日本で唯一、全長約170センチという人間の成人男性と同じほどの大きさを持つ人魚ミイラが存在します。
そのミイラが安置されているのは、静岡県にある宗教団体「天照教社」。天照教社は富士山麓に位置する明治初期に開基された宗教団体です。
ただし、現在このミイラは常設展示されておらず、見学のための問い合わせ先も不明の状態。今回は、教社の外観や周辺の住民へのインタビュー、そして関連書籍の情報をもとに、日本最大とされる人魚ミイラの実態に迫ります。
天照教社の問い合わせ先
現在、天照教社への問い合わせ手段はありません。他サイトを確認すると2018年ごろまでは拝観ができていたようですが、2025年に社へ訪れても、常駐している職員はおらず、問い合わせ先として示されている電話番号に通話しても「現在使用されていません」とアナウンスがなり繋がりません。

Facebookに公式アカウントが存在しますが、メッセージを送信しても梨のつぶて。したがって、日本最大の人魚のミイラは現在見ることができない状況です。北海道にも天照教という団体が存在しますが、電話を掛けた所、静岡県の天照教社とは関係がないそうです。
管理者は現在遠方に住んでいる
富士山修行を行う修験道の団体に遭遇したので、天照教社について質問させていただきました。この団体なんでも修験道の行場近くに天照教社があることから、駐車場を間借りしている関係なのだとか。

修験道の団体によると
管理者は現在関東地方に住んでいる。先代は近隣に住んでいるが、高齢のため引退された。建物は綺麗にされているので、清掃業者や檀家さんが定期的に立ち入る施設ではあるのではないか。
とのことでした。
天照教社の様子
天照教社の様子を観察してみましょう。雰囲気は通常の神社で特別珍しい様子はありませんでした。

本殿に人魚のミイラがまつられているそうですが、鍵がかかっており中を覗くこともできません。残念すぎる。

人魚のミイラの詳細

以下は『天照教本社』【2010年5月号No.86】で掲載されている人魚のミイラの写真です
https://outer-network.com/outer-network.cgi?no=283
写真から人魚のミイラを観察してみましょう。人魚は寝かされている状態ではなく、尾びれの手前で体を曲げ、正面を向いた姿勢で固定されています。座高は130センチ程ですが、尾びれを伸ばせば170センチもある巨大なサイズです。胸の前に両手を添え、まん丸の目と口を広げて何かを訴えかけているような表情。口には牙が並び、アゴをよく見るとひげが生えています。表情に人間らしさがうかがえますが、肩幅に比べ大きな頭とつぶれた鼻は妖怪のよう。
大きなウロコが見て取れますが、ハゲている部分もある。これは人魚を食べると長寿に効くとして信者たちが食べてしまった跡。
人魚のミイラは譲り受けたもの
なぜ天照教社で人魚のミイラが奉られているのだろうか。経緯は以下のとおりです。
人魚のミイラは天照教社の初代教祖が明治12年に播磨で知り合った浦上という老人から譲り受けた品であり。口伝えでは聖徳太子が生きていた時代に幾年となく漁を業とした罪により罰を受けた者が人魚となったとのこと。人魚は殺生欲の恐ろしさを伝えるために末長くこの姿を残したいと語り息絶えたと伝えられています。
参考文献
山口直樹『[決定版]妖怪ミイラ完全File』学研パブリッシング 2010年
アクセス
住所:〒418-0011 静岡県富士宮市粟倉2608
まとめ
170センチの日本最大の人魚のミイラは深海に住む美しい人魚姫のような姿ではなく、殺生欲の業の深さを伝えるおぞましい姿でした。現在拝観する手段がないのが残念です。最後までご覧いただきありがとうございました