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夢で見たらあの世行き!?シャーマンキングにも登場した黄泉の穴【猪目洞窟】

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稲目洞窟の入り口 島根県
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ここは現世と黄泉の境い目か──。古くから「死者の世界へと繋がる」と信じられてきた猪目洞窟(いのめどうくつ)。一歩足を踏み入れると内部は魂が吸い込まれそうなほどの暗闇が広がり、天井から滴る水音が不規則に響き渡ります。その音を聞いていると、まるで催眠術にかかってしまうかのような不思議な感覚に。ふと見上げれば緑色の岩肌が虹のような層をなし、神秘的な光景が目の前に現れます。
さらに、この洞窟は人気漫画『シャーマンキング』で主人公が修行を積んだ「ヨミの穴」のモデル地としても知られています。

不屈のブルースチェン(ライター)
不屈のブルースチェン(ライター)

今回は、そんな猪目洞窟の謎めいた魅力と荘厳な雰囲気を写真と共にご紹介します。

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猪目洞窟内部はどこまで行ける?深部で体験する異次元空間と黄泉の国への本能的警告

祠の様子

猪目洞窟は、幅も奥行きも約30メートルという想像を超える広さを持つ洞窟です。驚くべきことに洞窟内部には進行を阻む柵などは一切なく、理論上はどこまでも自由に奥へと進むことが可能です。しかし、一歩また一歩と暗がりへ足を踏み入れるにつれ、天井は徐々にその高さを低め経験したことのないような息苦しさと正体不明の強烈な圧迫感が全身を包み込みます。

内部の様子

暗闇の中でじっと佇んでいると、まるで魂ごと深淵に吸い込まれてしまいそうな感覚に襲われます。ここでは神隠しや時空の歪みといった超常現象が本当に起こってしまっても何ら不思議ではない…そんな非現実的な思考が頭をよぎるほど、異質な空気に満ちているのです。
事前に「黄泉の世界へ繋がる場所」という情報を得ていたからこのように感じてしまうのでしょうか? いや、おそらくそれだけではないはずです。この洞窟の奥には明らかに人の領域を超えた何か、軽はずみな好奇心で踏み込んではならない厳粛な何かが潜んでいる――肌が粟立つような、本能的な警告をひしひしと感じずにはいられませんでした。

【猪目洞窟の神秘】天井に輝く緑の虹「グリーンタフ」とは?その成り立ちと美しさの秘密

洞窟の上部には鮮やかな緑色を帯びた岩の層、通称「グリーンタフ」がまるで巨大な虹のようにカーブを描いています。この神秘的な緑の色彩は洞窟内部の漆黒の闇との間に見事なコントラストを生み出し、訪れる者を一層幻想的な世界へと深く誘い込みます。
この美しいグリーンタフの正体は、緑色に変質した凝灰岩です。その成り立ちは壮大で、太古の昔、海底火山の噴火によって降り積もった火山灰が地中深くの火山活動に伴う熱水の影響を受け、長い時間をかけてこのような美しい緑色へと変化したと考えられています。

その貴重な地質学的特徴から、猪目洞窟は「島根半島・宍道湖中海ジオパーク」を構成する重要なジオサイト(地球活動の遺産を見学できる場所)の一つとしても登録されており、地球のダイナミックな営みを感じられる貴重なスポットでもあるのです。詳しい情報はこちらhttps://kunibiki-geopark.jp

【出雲の黄泉伝説】猪目洞窟と『出雲国風土記』の一致点|黄泉比良坂、奥宇賀の黄泉の穴も紹介

洞窟から振り返った様子

猪目洞窟が放つただならぬ雰囲気は古文書の記述によってさらにその神秘性を深めます。奈良時代に編纂された地誌『出雲国風土記』には「黄泉の穴」に関する記述が見られ、その描写がこの猪目洞窟の特徴と驚くほど一致しているのです。このことから猪目洞窟は単なる自然の洞窟としてではなく古来より「あの世」、すなわち黄泉の国へと繋がる神聖かつ畏怖すべき場所として、人々に強く認識されてきたと考えられます。

『出雲国風土記』

「夢にこの磯の窟の辺に至れば、必ず死ぬ。故、俗人古より今に至るまで、黄泉の坂、黄泉の穴と名づくるなり」「夢の中でこの洞窟に行くのを見たならば、必ず死んでしまう。ここは昔から黄泉の坂、黄泉の穴と呼んでいる。」

しかし、神話の国・出雲には他にも「黄泉の国の出入り口」とされる場所がいくつか語り継がれています。例えば、松江市東出雲町には日本神話にも登場する有名な「黄泉比良坂」があり、また出雲市奥宇賀町にも別の「黄泉の穴」とされる場所が存在しそれぞれに古からの伝承が息づいているのです。

「黄泉比良坂」の場所をGoogleマップで確認する。
出雲市奥宇賀町の「黄泉の穴」をGoogleマップで確認する。

猪目洞窟は古代人の墓だった!弥生・古墳時代のシャーマン?人骨と船葬が語る黄泉への道

猪目洞窟は黄泉への入り口という神秘的な顔だけでなく、古代人たちにとって聖なる埋葬施設であったという、もう一つの重要な側面を持っています。ここで行われた発掘調査によって弥生時代から古墳時代にかけて葬られたとみられる13体以上の人骨と彼らと共に永い眠りについていた貴重な副葬品の数々が発見されました。

慰霊碑
洞窟近くにここに眠る古代の人々を偲び、その霊を慰めるための慰霊碑も静かに建っています。

特に注目すべきは弥生時代後期の人骨が遠く沖縄近海でしか採れない貝「ゴホウラ」で作られた腕輪を身に着けていたことです。これは埋葬された人物が当時の社会において極めて地位の高いシャーマンのような、特別な霊的役割を担っていた可能性を強く示唆しています。

さらに、古墳時代の層からは丸木舟を用いて遺体を直接覆うという「船葬」と呼ばれる特殊な埋葬方法も確認されました。海に面したこの猪目洞窟が、まさに異界への旅立ちの場、黄泉への通路として見立てられていたことがわかります。
これらの貴重な出土品群は昭和49年(1974年)に島根県の指定文化財となり、現在は出雲弥生の森博物館で大切に展示・保管されています。

猪目洞窟は船置き場工事で偶然発見!昭和23年の秘話と“出雲らしい”日常と黄泉の共存

船おきば

猪目洞窟が、その神秘的な全貌を私たちに見せるようになったのは意外にも戦後間もない昭和23年(1948年)のことでした。地元の方々が漁船の船置き場として利用していた場所を拡張する工事を行った際、長年積もっていた土砂を取り除いたところ、この巨大な洞窟が偶然発見されたのです。

船置き場の様子。船置き場の奥が猪目洞窟です。

洞窟の入口周辺は現在も船置き場としての雰囲気を色濃く残しており、長年使われてきたであろう漁の道具などが、埃をかぶりながらもそこかしこに置かれています。人々の日常的な営みのすぐそばに、古来より黄泉の世界へと繋がるとされる異界の入り口が静かに口を開けている──この一見不思議な光景こそが、神話が今も人々の暮らしの中に深く息づく街・出雲ならではの、どこか懐かしくも神秘的な風景と言えるのではないでしょうか。
船置き場のすぐ向こうにははっとするほど美しい日本海が広がり、その青と洞窟の暗がりが見事なコントラストを描いています。船置き場の奥に猪目洞窟の深淵が続いているのです。

【猪目町の地名由来】猪目洞窟の“猪目”とは?イノシシの目に見える対岸の窪みが起源説

猪目洞窟

猪目洞窟が位置するこの一帯の住所は、その名も「猪目町(いのめちょう)」と言います。この「猪目」というユニークで印象的な地名には興味深い由来が伝えられています。
一説によると洞窟の対岸に見える岩壁に自然にできた窪みがあり、その形が遠くから見るとまるでイノシシの鋭い目を彷彿とさせることから、この地域全体が「猪目」と呼ばれるようになったと言われているのです。洞窟そのものの神秘性に加え、周辺の地名にも自然の造形に由来する物語が息づいているのはとても面白いですね。

五感が狂う暗闇へ…猪目洞窟は『シャーマンキング』主人公が巫力を高めた「ヨミの穴」

私の大好きな漫画『シャーマンキング』に猪目洞窟がモデルとなった「ヨミの穴」が登場します。主人公の少年が霊を操るための巫力を高めるために修行をする場所なのですが、四方八方上下左右の区別もつかない暗闇を歩き続け極限状態によって巫力を高めると説明されます。五感の全てが麻痺し、多くのシャーマンが狂った場所・・・しかし主人公はケロッと帰宅し「今は手探りでもただ前に進むしかないいずれなんとかなる」と諦めずに修行をやり遂げたのでした。

不屈のブルースチェン(ライター)
不屈のブルースチェン(ライター)

小さな頃に読んだ漫画で登場した場所「ヨミの穴」。大人になった今でも印象的に残っているシーンです。主人公が話す適当に聞こえるが、何事にも動じない「なんとかなる」。そんな言葉を今でも心に留めています。いつかはこの目で見てみたいと思っていた場所なので感慨深いモノがありました。

猪目洞窟は一説によれば日御碕灯台近くの縦穴海食洞(たてあなかいしょくどう)に通じる道があると伝えられています。『シャーマンキング』でも猪目洞窟と思われる洞窟が日御碕灯台近くの洞窟へと繋がっていました。

猪目洞窟は2021年開催の「日が沈む聖地出雲×シャーマンキング展ゴーイング出雲★聖地巡礼スタンプラリー」の聖地巡礼地としても紹介されています。https://www.izumo-kankou.gr.jp/event/14543

アクセス

[猪目洞窟]
住所:出雲市猪目町1338
詳しい場所をGoogleマップで確認する

駐車場はありませんが、近くには海水浴場があり、車を停めるスペースはあります。近隣の迷惑にならないようにしましょう。

まとめ

黄泉の国への入り口、人気漫画『シャーマンキング』の修行の地「ヨミの穴」のモデル、そして古代人の魂が眠る聖域──これまでご紹介してきたように、猪目洞窟(いのめどうくつ)は、一つの言葉では到底語り尽くせない、実に多層的で奥深い魅力に満ちた場所です。
『出雲国風土記』にもその名が記された悠久の歴史、吸い込まれそうな暗闇と天井に輝く神秘的なグリーンタフが織りなす自然の造形美、シャーマンが眠っていた可能性を示唆する考古学的な大発見、そして日常の漁港のすぐ隣に異界が口を開けるという、神話の息づく出雲ならではの風景。この洞窟は、訪れる者に畏怖の念と大いなる感動、そして尽きることのない歴史ロマンを与えてくれます。時には、自分自身の内面と深く向き合うきっかけさえもたらしてくれるかもしれません。

もしあなたが、日常の喧騒から少し離れて、地球が創り出した神秘や古代の人々の息吹を感じたい、あるいは特別な場所で何か新しい発見を求めたいと願うなら、猪目洞窟はきっと忘れられない体験を提供してくれるでしょう。ただし、その深淵へ足を踏み入れる際には、この場所が持つ特別な力への敬意と、自然に対する慎重な心構えをどうか忘れないでください。
神話と現実が、そして太古と現代が交錯する猪目洞窟。あなたもいつか、このミステリアスな洞窟を訪れ、その奥に広がる悠久の物語に触れてみてはいかがでしょうか。きっと、想像を超える何かが待っているはずです。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。