猪目洞窟(いのめどうくつ)は古来より死者の世界、黄泉へと繋がると考えられていた場所。洞窟の奥は吸い込まれそうになるほどの暗闇で、天井からポタポタとしみ出た水滴の音を聞いていると催眠術にでもかかりそうな雰囲気があります。また洞窟を見上げると、緑色の岩石の層が虹のようにかかっており、とても神秘的です。詳しい様子を写真と共にお伝えします。
猪目洞窟は漫画『シャーマンキング』の主人公が修行をした「ヨミの穴」のモデルになった場所としても知られています。
猪目洞窟の中は自由に見学可能。ただし、気安くは進めない
猪目洞窟は幅と奥行きが30mあるとても大きな洞窟です。洞窟内部には柵はなく、自由に奥へとに進むことができます。
とは言え、先に進むほど天井が低くなっていることに加え、息苦しいというか未知の圧迫感を感じずにはいられません。じっとしていると暗闇の中に吸い込まれそうになり、神隠しやタイムスリップなど超常現象が起きても不思議ではない異質な空間。「黄泉の世界へ繋がる」という事前情報があるからか?いや明かに、気安く奥に進むべきではないと感じます。
猪目洞窟の上部に鮮やかな緑色がかかっており神秘的
猪目洞窟の上部には緑色の岩層、「グリーンタフ」が見られます。自然が織りなす色の層が大変美しく、暗闇の洞窟とのコントラストで神秘性がより一層際立っています。
グリーンタフとは緑色の凝灰岩のことで、海底火山の噴火による火山灰が、火山活動による熱水で変質を受たものです。猪目洞窟は島根半島・宍道湖中海ジオパークのジオサイトとして登録されています。詳しい情報はこちらhttps://kunibiki-geopark.jp
猪目洞窟を夢で見たらあの世行きと言い伝えられている
この猪目洞窟は『出雲国風土記』に記載されている黄泉の穴と特徴が一致しており、猪目洞窟は古来より「あの世へ」と繋がっていると信じられてきました。
他にも、松江市東出雲町にある黄泉比良坂(よもつひらさか)という場所と出雲市奥宇賀町の黄泉の穴という場所が、黄泉の国の出入り口として伝承があります。
「黄泉比良坂」の場所をGoogleマップで確認する。
出雲市奥宇賀町の「黄泉の穴」をGoogleマップで確認する。
猪目洞窟は古代人の埋葬場所でもあった
猪目洞窟は古代人の埋葬施設でもありました。発掘調査の結果、弥生時代から古墳時代に葬られた13人以上の人骨と副葬品が発見されています。
特に弥生時代の後期の人骨は沖縄でしか採れない貝「ゴホウラ」の腕輪を付けており、地位の高いシャーマン的役割の人物が埋葬されていたことがうかがえます。さらに、古墳時代のものと考えられる丸木舟で、直接遺該を覆う特殊な埋葬方法である船葬も確認されており、海に面した猪目洞窟が異界への通路として見立てられていたことが考えられます。これら出土品は、昭和49年に島根県指定文化財となり、出雲弥生の森博物館に展示保管されています。
洞窟周辺は船置き場になっている
猪目洞窟は昭和23年(1948年)に漁船の船置き場として拡張工事をした際、堆積土を取り除いたときに発見された洞窟です。今でも船置き場として使用されている形跡があり、長年放置され埃をかぶった道具が散乱しています。
生活の場所と黄泉の世界へつながる洞窟が同じ場所にあるのは、神話が息づく街出雲らしい風景ですね。
対岸の窪みが猪の目に見えることから「猪目」という住所になった!?
猪目洞窟周辺の住所は「猪目町」です。これは洞窟対岸にある、窪みがイノシシの目に見えることから、この地域が「猪目」と呼ばれるようになったと言われています。
シャーマンキングで登場した「ヨミの穴」が猪目洞窟
私の大好きな漫画『シャーマンキング』に猪目洞窟がモデルとなった「ヨミの穴」が登場します。主人公の少年が霊を操るための巫力を高めるために修行をする場所なのですが、四方八方上下左右の区別もつかない暗闇を歩き続け極限状態によって巫力を高めると説明されます。五感の全てが麻痺し、多くのシャーマンが狂った場所・・・しかし主人公はケロッと帰宅し「今は手探りでもただ前に進むしかないいずれなんとかなる」と諦めずに修行をやり遂げたのでした。
小さな頃に読んだ漫画で登場した場所「ヨミの穴」。大人になった今でも印象的に残っているシーンです。主人公が言う適当に聞こえるが、何事にも動じない「なんとかなる」。そんな言葉を今でも心に留めています。いつかはこの目で見てみたいと思っていた場所なので感慨深いモノがありました。
猪目洞窟は一説によれば日御碕灯台近くの縦穴海食洞(たてあなかいしょくどう)に通じる道があると伝えられています。『シャーマンキング』でも猪目洞窟と思われる洞窟が日御碕灯台近くの洞窟へと繋がっていました。
アクセス
[猪目洞窟]
住所:出雲市猪目町1338
詳しい場所をGoogleマップで確認する
駐車場はありませんが、近くには海水浴場があり、車を停めるスペースはあります。近隣の迷惑にならないようにしましょう。