多国籍な文化が渦巻くエネルギッシュな街、東京・大久保。JR大久保駅の南口から細い路地を少し歩くと日本の風景とは思えないほど、赤と金色に輝く極彩色のド派手な建物が突如として姿を現します。
ここが台湾や中国沿岸部で篤く信仰される女神「媽祖(まそ)」を祀る寺院、「東京媽祖廟」。
2013年、ある台湾人が受けたという**“神の啓示”をきっかけに建てられたこの場所は、今や人口の35%が外国人という多国籍タウン大久保において日本で暮らす中国人や台湾人の人々にとって、故郷を思い祈りを捧げる大切な“心の拠り所”**となっています。

今回は、そんな異国情緒あふれる東京媽祖廟の荘厳で美しい姿とその誕生に秘められた不思議な物語を豊富な写真と共に詳しくお伝えします!
【東京媽祖廟】入場無料で参拝OK!でも中国語だらけで入りづらい!? 勇気を出して入ってみた結果…

東京の多国籍タウン・大久保に輝く「東京媽祖廟」。このかなり豪華でゴージャスな建物は入場無料で、誰でも自由に参拝することができます。
しかし、そのきらびやかさと共にいざ入口に近づくと少し戸惑うかもしれません。なぜなら、境内の案内や説明書きはほぼ全てが中国語。建物の醸し出す本格的な雰囲気と相まって、異国情緒が満点すぎて、「ここは本当に日本…?部外者が入っても大丈夫なのかな…?」と、正直かなり入りづらいオーラを放っているのです。

私が入口付近で入ろうかどうしようかとウロウロしていると偶然にも中からスタッフの方が出てきました。
思い切って「見学させていただいても良いですか?」と尋ねると、「もちろんです!どうぞ、どうぞ!」と満面の笑みでウェルカムな様子。
ホッと胸をなでおろし、中へと足を踏み入れました。


【東京媽祖廟2階】三国志の英雄・関羽と縁結びの神様「月下老人」にご挨拶

東京媽祖廟の建物は4階建てで、各フロアにそれぞれ異なる神様が祀られています。
まず2階で私たちを迎えてくれるのは三国志の英雄として名高い武将・関羽。商売の神様としても信仰される関羽はここ大久保でも多くの人々の願いを受け止めています。
そして、もう一方には道教の神様で、ピンク色の肌に豊かな白い髭をたくわえた、なんとも愛嬌のある**「月下老人」も。このお爺さんこそ、運命の男女を赤い糸で結ぶという、あの有名な「赤い糸の伝説」のモデル**と言われる神様。
【東京媽祖廟3階】万能の女神「媽祖」と台湾式本格占い「ポエ占い」に挑戦!

3階はこの寺院の主神である三体の「媽祖」様が鎮座する「媽祖殿」です。
媽祖はもともと航海の安全を守る海の女神ですが、今では家内安全、交通安全、商売繁盛、合格祈願、心願成就と、あらゆる願いを聞き届けてくれる万能の神様として台湾や中国沿岸部で絶大な信仰を集めています。

祭壇には、台湾のお寺ではお馴染みの**「擲筊(ポエ占い)」**と呼ばれる占い道具が置かれていました。これは半月形の木片を二つ床に投げ、その裏表の組み合わせで神様の御心をうかがうというもの。
日本ではなかなか体験できないので、ぜひ挑戦してみましょう。
また、祭壇の反対側にはおみくじもあり、ポエポエを2つ同時に投げ、裏表になったら引くことができるという本格的な作法です。
ただし、おみくじの結果は全て中国語なので読解には少し気合が必要かもしれません。(ポエ占いの詳しいやり方は、台湾の観光情報サイト「台湾さんぽ」などが参考になります。)


【東京媽祖廟4階】観音殿と窓の外の“もう一つの中華世界”そして台湾との深い繋がり

最上階である4階は日本人にも馴染み深い「観音殿」となっていました。興味深いことに、2階から4階までの各フロアは基本的に同じレイアウトで作られています。
「ゲームのバイオハザードなら、各階の像を正しい位置に入れ替えると、どこかに隠し扉が現れるパターンだ…!」などと、あらぬ妄想を掻き立てられてしまいました。
そして、この4階の窓から外を眺めると、さらなる驚きが。なんと、お向かいのビルも媽祖廟と同じく極彩色の中華様式なのです!
実はこれ、現在建設中の東京媽祖廟の新館で、完成すればさらに壮麗な空間が広がるのでしょう。壁に施された武将たちが勇ましい姿でこちらを睨んでいました。
ちなみに東京媽祖廟にある神様の像やきらびやかな飾り細工などはそのすべてが本場・台湾で造られ、海を渡ってこの大久保の地に運ばれてきたもの。だからこそ、これほどまでに本格的で、力強い雰囲気を放っているのですね。
神の啓示で建てられた東京媽祖廟

なぜ、東京・大久保にこれほど本格的な台湾の寺院が建てられたのでしょうか? きっかけは、東京媽祖廟の代表である連昭恵さんが受けた女神・媽祖からの**「神の啓示」**でした。
ある日、連さんがお子さんを寝かしつけ、夢と現実の狭間を漂っていた時、媽祖様から直接語りかけられたといいます。
「あなたはじきに海を越え、日本にて事業を始めることでしょう。この事業にはわたしが力添えをしますから、必ず成功します。そしてあなたが事業を成し、十分な富を蓄えた暁には、約束しなさい。道場を建てすべての痛苦と貧窮の中にある衆生を助け、ひろくこれらを救うのです。彼らが苦しみを離れ、安らぎを得ることのできるように。」 (東京媽祖廟公式サイトより引用)
驚くべきことにそのお告げがあった時、連さんには台湾を離れる予定も、ましてや日本を訪れる予定さえ全くありませんでした。建立の地である**「東京の新大久保」という場所も媽祖様ご自身が決めた**のだとか。
まさに神の導きとしか言いようのないエキセントリックな経緯を経て、この東京媽祖廟は誕生したのです。
アクセス
住所:東京都新宿区百人町1-24-12
詳しい場所をGoogleマップで確認する
電話:03-5348-5220
時間:9〜18時
料金:無料
まとめ
東京・大久保の多国籍な喧騒の中に、突如として現れる極彩色の聖域「東京媽祖廟」。今回は、そのきらびやかな見た目の奥に隠された、不思議で心温まる物語と、異国情緒あふれる内部の様子をご紹介しました。一人の女性が受けたという**“神の啓示”から始まり、媽祖様ご自身が建立の地を決めたという、にわかには信じがたい、しかし真実の誕生秘話。そして、関羽や月下老人、万能の女神・媽祖様といった、私たちの様々な願いに寄り添ってくれる多様な神々が一堂に会する空間**。さらに、台湾式の本格的な「ポエ占い」など、日本ではなかなかできない貴重な異文化体験も魅力です。確かに、入口に並ぶ中国語の案内や、あまりにも本格的すぎる雰囲気に、最初は少し足がすくんでしまうかもしれません。しかし、その扉の向こうには、日本で暮らす多くの人々が故郷を思い、静かに祈りを捧げる、**温かく、そして誰にでも開かれた“心の拠り所”**が広がっていました。東京媽祖廟は、大久保という街の多様性を象徴するような、まさにパスポートのいらない小さな台湾。次に大久保を訪れる際には、ぜひ勇気を出してこのきらびやかな寺院を訪れ、その不思議な物語と、そこに集う人々の想いに触れてみてください。きっと、あなたの東京散ా策に、深く、そして色鮮やかな彩りを加えてくれるはずです。最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。


