屯鶴峯(どんつるぼう)は月の表面のようなまっしろな岩が一面に広がる奇勝地。風化や浸食によって、「でこぼこ」と白い岩が露出しており、無数の岩の造形は、自然が作り出した芸術作品のようです。
この絶景を眺めるだけでも訪れる価値は充分ですが、屯鶴峯にはもう一つの顔があります。それが、太平洋戦争末期に建設された「屯鶴峯旧日本陸軍地下壕」。観光地として整備されたエリアを約30分程度進んだ先でひっそりとその入り口が現れます。小さな穴のような入り口からは想像もできない、巨大な空間が広がっているのです。
終戦間際に本土決戦に備えて作られたこの地下壕は、その歴史的価値から多くの人を惹きつけます。しかし、その存在はあまり知られておらず、少しわかりにくい場所にあるため、事前にしっかりと下調べをしていくことをおすすめします。
この記事では、屯鶴峯の奇岩群と地下壕の魅力を、写真とともに詳しくご紹介します。
屯鶴峯旧日本陸軍地下壕の見所と歴史
![地下壕が三つ並んだ景色](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-20230218_133432.jpg)
奈良県香芝市の屯鶴峯にある旧日本陸軍地下壕は、太平洋戦争末期、1944年頃からわずか2カ月という短期間で建設されました。300人の地下壕掘削専門部隊が昼夜を問わず作業にあたり、多くの犠牲を払って造られた壮大な地下壕です。
地下壕の内部は、まるで迷宮のような複雑な構造で入り組んでおり、総距離2キロに及ぶ地下通路が続いています。
地下壕内部の様子
![地下壕への入り口](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-20230218_133541.jpg)
入り口に近づくと、ひんやりとした空気が漂っています。トンネルの特性上の冷気だとは思いますが、明かに空気の質が変わることと、戦争遺物という背景から心霊的な空気を感じずにはいられません。
![トンネル内部](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-20230218_133807.jpg)
上部入り口が2つ並んでいる両入り口ともに天井から染み出した水が溜まり、足元が常に湿っている状態でした。コウモリの糞尿による汚染の影響でしょうか。水は濁り、悪臭を放っていました。この水溜まりを避けて進むことは困難で、長靴や防水性の高い装備が必要不可欠です。
この記事で紹介する地下壕への入り口は三箇所です。先ほどの水溜りで進めない地下壕入り口のすぐ近くにも、別の入り口が存在します。こちらの入り口は水溜りになっていないので、中を進んで探索することができます。内部は広々として、通路の幅は約5メートル、天井の高さは約3メートルほどでした。
![地下壕への入り口。コンクリート塀が設置されている](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-20230218_134937.jpg)
地下壕の内部は真っ暗。登山用のライトを持参しましたが、明かりが十分ではなく、ほとんど前が見えない状態です。トンネルを数十メートル進むと、先ほどの水溜りに続く分かれ道が現れます。あみだくじのようにそれぞれの道がつながっていました。
![内部の様子](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-20230218_134011.jpg)
屯鶴峯旧日本陸軍地下壕は敗戦が濃厚となった太平洋戦争末期の時代に航空部隊、航空総軍の戦闘司令所として掘削されました。
驚くことに、終戦の日8月15日まで工事が進められていたといいます。
日本で建設された地下壕の戦闘指令所は、屯鶴峯地下壕と長野県長野市の松代大本営地下壕の2カ所だけ。本土決戦を見据えての掘削で急ピッチで作業が進められたと記録にあります。
香芝の屯鶴峯地下壕、戦争の史跡を市民ら見学 ニュース奈良の声 2015年8月9日 浅野善一 http://voiceofnara.jp/news484.html
屯鶴峯地下壕(香芝市) 太平洋戦争末期に建設 ここにもあった戦跡 /奈良 毎日新聞 2020年12月2日 https://mainichi.jp/articles/20201202/ddl/k29/040/371000c
![出口の写真](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-20230218_134538.jpg)
ソロで探検!どんづるぼうにある地下防空壕(奈良の心霊スポット) キャベシ太郎 Motorcycle
YouTuberの「キャベシ太郎 Motorcycle」さんが分かれ道を含め、地下壕を詳しく探索した動画をUPされています。
屯鶴峯の見所
屯鶴峯旧日本陸軍地下壕へは観光地化された屯鶴峯の入り口から進むとたどり着くことができます。
![屯鶴峯の景色](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-20230218_125456.jpg)
屯鶴峯というユニークな名前は、遠くから眺めると、白い岩肌が群れをなしている様子が、鶴が屯(たむろ)しているように見えることから名付けられました。
この独特の景観は、数百万年前の二上山の火山活動がその起源です。火山噴火によって噴出した火山灰や火砕流が堆積し、長い年月をかけて固まって凝灰岩となりました。その後、地殻変動によって隆起し、風雨による浸食を受けた結果、現在の奇岩群が形成されたのです。
白い岩肌は、この凝灰岩が風化し、中の白い鉱物が露出したためです。まるで月の表面のような独特の風景は、訪れる人を異世界へと誘います。標高約150メートルの岩山は、比較的気軽に登ることができ、山頂からは雄大な景色を一望できます。
![ぼこぼこと岩が露出する谷](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-20230218_125357.jpg)
地下壕への行き方
屯鶴峯旧日本陸軍地下壕は、一般の観光ルートからは外れており、少しわかりづらい場所にあります。事前に地図をよく確認し、安全に配慮して探検しましょう。ここでは写真とともに詳しい地下壕への行き方を説明します。
屯鶴峯を登りしばらく進むと、「この先行き止まり」と記された、紙が木に括り付けられています。そこから、まっすぐ進むと分かれ道に差し掛かかります。
![分かれ道の様子](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-20230218_125115.jpg)
地下壕への道のりを簡単に説明すると、山道をしばらく登って屯鶴峯の麓へと急激にくだるというイメージです。
道中で「この道であってるの?」と不安になるかもしれませんが、木に赤いテープがくくりつけられていることと、時折手書き看板のルートを示すテープ示されているので注意深く進めば迷うことはないでしょう。
![分かれ道](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-1.jpg)
下写真の分かれ道は、どちらへ進んでも地下壕にたどり着くことができます
左に進むと鉄塔を経由して、地下壕へ向かうルートになる。右に曲がると地下壕への最短ルートです。
![分かれ道の写真](https://tinnbae.com/wp-content/uploads/2023/02/Naratinnsupot-donnzurubou-.jpg)
この先を進むと、急激に坂道をくだることになる。小さな小川を越えた先が屯鶴峯旧日本陸軍地下壕です。
地下壕は立ち入り禁止
1993年から「NPO法人屯鶴峯地下壕を考える会」が地下壕の保存を訴える為、毎年終戦の月である8月に地下壕の見学会を実施しています。地下壕へ訪れる際は、この見学会を利用しましょう。問い合わせは以下を参考にしてください
奈良県 文化・教育・くらし創造部 青少年・社会活動推進課
奈良県奈良市登大路町30番地 奈良県庁主棟1F
0742-27-8715
また地下壕の一部は京都大学防災研究所附属地震予知研究センター屯鶴峯観測所として使用されており、地震予知研究計画の一環として地殻変動の連続観測が実施されています。坑道部は崩落の危険性があることと,観測に支障をきたすことから立ち入りは禁止されています。
京都大学防災研究所附属 地震災害研究センター 屯鶴峯観測所 https://eqhz.dpri.kyoto-u.ac.jp/obs/DON.html
アクセス
所在地:香芝市穴虫地内(穴虫峠から北東へ約350m)、県道703号線沿い
Googleマップで詳しい場所を確認する
駐車場:普通車5台
トイレ:有(駐車場内)
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まとめ
屯鶴峯旧日本陸軍地下壕は、戦時中に人々が困難な状況に直面していた時代の、貴重な記録として、今なお多くの人々に注目されるスポットです。今回は地下壕への見所だけでなく行き方についても詳しく記入しましたが、許可のない立ち入りは禁止されているのでご注意ください。
以上です。最後まで、ご覧いただきありがとうございました。